


元朝日新聞社常務取締役
前財団法人日本対がん協会理事長
広瀬 幸雄 氏
高等教育機関のシンボルである大学に対する社会的ニーズは時代とともに変化してきましたが、その中で常に変らず重要な位置を占めてきたのが「人材育成」機能です。
世界大不況に直面して再生を模索している日本の産業界では今まさに優秀な人材が求められており、人材供給の根源である大学への期待は一層高まっています。
よい人材を取りたい企業側とよい人材を育てたい大学側とは本来ベクトルは一致していると言えるでしょう。
一方で18歳人口の減少による「大学全入」という事態の中で大学はすでに淘汰の時代に入っています。それに伴い、従来は暗黙知の領域にあった個々の大学の実力や人気度の格付け・ランキングが公然と論議されるようになってきました。
その時に大学の人材育成能力を示すものとして最重視されるのはかつての「偏差値」ではなく、学生の「就職率」という端的な指標です。
今回のNS人財創造機構(NSO)の旗揚げは、この二つの指標の間に広がるゾーンすなわち本来一致していたベクトルに生じたズレの部分に、なすべきことが山のようにあり、それが真の大学改革となり真の人材育成につながるという確信から生まれてきたものであろうと思います。
就職率が肝心とされながら、学生の「エンプロイアビリティー」を向上させるための制度的措置や具体的施策はいずれの大学においても事実上未着手あるいはきわめて不十分です。
NSOはこの分野で、地域社会、企業、メディア、自治体と大学との効果的な連携の枠組みを随時提供していけるよう準備しています。
しかしNSOが目指すのは、単に就職に強い学生を育てることではないようです。
仕事をすることの意味は「自分が組織の目的に貢献している」という充足感にありますが、これだけでは組織の側からみた優秀な人材というに過ぎません。
仕事をすることのもう一つの意味は、それを続けることで自己が成長向上するという自覚にあり、それこそがすぐに陳腐化するスキルや資格を乗り越えてこれから先も常に前進していく内発的なパワーになるのです。
NSOが敢えて人材でなく「人財創造」という言葉を使うのは、そのような職業観、人生観の反映であり、そこから出てくるのは対症療法でなく長期的な視野に立った企画です。
清新の気と豊富な経験を併せもつ創始者の二人の熱気を帯びた提案がご関係の方々の共感をよび、有意義なプロジェクトが数多く育ち実っていくことを期待したいと思います。

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